揺らぐ食の安全、結局は誰を信じられるかに尽きる
食の安全性について不安を持たれている方はたくさんいらっしゃると思います。
食品偽装。
農薬。
化学肥料。
遺伝子組み換え。
放射能。
食品添加物。
挙げていけばきりがないほど、食の不安にあふれています。
そして。
これらについて安全だ!危険だ!と判断するためには、判断基準になる材料が必要になると思いますが、その情報も世の中にたくさんあふれています。
テレビから。
雑誌から。
新聞から。
インターネットから。
著名人の講演から。
噂話から。
山のようにある情報から、あなたはどのようにして
安全 or 危険
を判断していますか?
どの情報が正しくて、どの情報が間違っているのか。
それを判断する基準がどこにあるのか、自分自身で把握しているでしょうか。
今回は。
自分の中にある安全・危険の判断基準について。
どの意見を信じてどの意見を信じないのか、という基準をどのように持てばいいのかについて触れていきます。
参考になれば幸いです。
安全基準は立場によって意見が違う
農家、科学者、評論家、政治家、公務員・・・。
世の中にはいろんな立場の人たちがいて、それぞれが置かれている状況を考えたうえで意見を持って発言をしています。
農薬の安全性、危険性。
立場によって意見が異なることは、なんとなく理解していただけるのではないでしょうか。
農薬を使わない栽培をしている農家は、農薬の危険性をアピールする。
農協からの組織票をあてにしている政治家は、農薬は安全であると主張する。
公務員であれば自分個人の意見を通すよりも、行政としての立場を優先して発言する。
それぞれの意見をそれぞれの立場で主張しています。
そこには。
賛成意見もあれば反対意見もあるわけです。
同じ農薬に対して、ある人は安全だと言っているのに別の人は危険だと言う。
なぜでしょうか。
それは。
人によって安全基準が違うからであり、それぞれ置かれているポジションを正当化するように発言するからです。
ぶっちゃけて言ってしまえば、日本の農薬について考えるなら安全基準はそのくらいのレベルだということ。
ほとんどの人が危険だと認めざるを得ないような農薬事情ではなく、ほとんどの人が安全だと太鼓判を押せるような状況でもない。
科学的に示されたデータに対して
「自分は安全だと思う」
「これは危険だろ!」
と意見が分かれるくらいの安全基準を満たしているということです。
ただし。
危険、安全、いろいろな意見を聞いていて感じることは、
ほとんどの日本人にとっては危険を及ぼすようなものではない
ということ。
1万人のうちの数人にはもしかしたら影響があるかもしれないけど、大多数の人には安全が確保されるような科学的データは示されています。
何十年という長期間でのデータはないじゃないかとか、複数の農薬が混ざったときに起こりうる化学反応は考慮されていないじゃないかとか、そのような不安はありますがざっくりと言ってしまえば
ほとんどの日本人にとっては危険を及ぼすようなものではない
と感じます。
詳しくは農薬が危険だと思っている人へ 技術は進歩する
詳しくは野菜の安全基準は心の中にある
自分で知識武装するよりも信頼できる人を探すことに注力する
このように私が意見を述べても、いち農家にすぎない人間の戯言(ざれごと)なんて信用できないという方は大勢いらっしゃると思います。
それは松本直之が信用できないということ。
国が定めた安全基準を満たしていても不安、というときは国が信用できない。
生産現場でちゃんと正しい農薬の使われ方をしていない、不正をしているかもしれないという不安。
これは生産者との信頼関係ができていません。
産地偽装や表示偽装の心配が強い方は、流通や小売に関わる人たちを信用できていません。
情報があまりにも多すぎて。
食卓にのぼるまでにあまりにも多くの手が関わりすぎて。
なにを信じていいのか分からなくなっています。
そんなときは。
必死に調べて勉強して、自分自身で情報を噛み砕いて、賛成意見も反対意見も取り入れながら、自分なりの意見を持つ必要があります。
農薬は危険だという意見だけじゃなく、農薬は安全だと主張する意見もしっかりと聞く。
そのうえで自分の立ち位置を決める。
そこまでやればおそらく、農薬について漠然とした不安を持つことはなくなると思います。
でも。
そのように勉強するにはそうとうな時間がかかります。
たくさんの情報を仕入れたからといって自分の意見を持てる保証もありません。
じゃあどうしたらいいのか。
そんなときは信じられる人を探してみてください。
食に関してはこの人の言うことだったら信じられる。
子育てについて相談するならこの人しかいない。
政治・経済のことはだいたいこの人の意見を信頼している。
病気のことはかかりつけ医に任せている。
というように特定の分野で信頼している人が少なからずいるのではないかと思います。
農業の分野においても信頼できる人を探してみてください。
そしてその人の意見を信じる。
ただそれだけです。
信頼できる人がうまく見つからないという問題はあるかもしれませんが、すくなくとも時間をかけて必死に勉強する必要はなくなります。
信頼して相談できる人が見つかると安心感を得られます。
安全はすごく大事です。
それは分かります。
でも。
安心はもっと大事です。
安心できなければ安全であっても意味がない、と言ってもいいくらい安心は大切なものです。
安心したいから安全を求める。
ということを忘れないでほしいと思います。