嫁に出す農家の気持ちを知れば野菜はもっと愛おしくなる

さて問題です。
野菜は食べ物である
○か×か。

みなさんは野菜を食べ物だと思いますか?
おそらくすべてのひとがイエスと答えるはずです。
野菜を食べる側の立場であれば、当然の答えです。
でも。
野菜をつくる側の立場であれば、その答えは違ってくることがあります。
それは。
野菜を食べ物として見るのとは違った捉え方をしている
ということ。
農家は、みなさんとは違った視点で野菜を見ているんです。

同じ野菜なのに、見る人の立場によってみえかたや捉え方が違うという事実。
今回は。
農家は野菜をどのように見ているのかを紹介していきます。
それを知ることで。
いままでとは違った角度から野菜を見ることができるようになります。
もしかしたら、私たち農家と同じような目線で野菜を見ることができるようになるかもしれませんよ。

 

農家の目線

基本的に農家は、野菜に愛情をかけて育てます。
強く、元気に、たくましく、健康に。
自分の子どもを育てるかのように、あれこれ世話をしながら一人前になってくれることを願っています。
ときには厳しく、ときには優しく。
数ヶ月あとに立派になって巣だっていくのを想像しながら、共に毎日を過ごします。

そして。
みなさんのもとに嫁がせたとき、
よい育てられ方をしましたね~
と言っていただけるように、成長を日々見守っているんです。

だから。
収穫するときにハサミを入れるのをためらいます。
ああ、もったいない!
こんなに見事に育ったのに収穫しちゃうのか・・・。

収穫してきた野菜を箱につめていくとき、一瞬ためらうことがあるんです。
立派に育ってくれてありがとう・・・。
ううぅ、元気でな。

わかりますか?
農家は野菜を
自分の子ども
のように育てているんです。

種をまいてから数ヵ月間、健康に育ってくれることを願って見守り続けてきて、実際に期待通り、期待以上の成長を見せてくれたとき、その喜びは絶頂に達します。
どうですか、見てくださいこのキャベツ!
見事に育ったでしょ!
収穫したくないけど、こんなに元気に育った野菜はみんなで味わうにかぎるね!

元気に育てば育つほど、嫁に出したくない。
ちょっと複雑ではありますが、農家は我が子を嫁に出すために日々せっせと野菜のお世話を続けています。

こういう気持ち。
なかなか伝わらないですよね。

 

感動が伝わらない理由

理由はかんたんです。
背景が見えてないから。
どんな想いで、どんなこだわりで、どんな苦労をしてその野菜が出来てきたのか。
野菜の成長にはどんなストーリーがあって、農家の子育てにはどんな物語があるのか。
野菜という商品の裏側に隠れているたくさんの物語が、食べる人のところまで伝わっていないんです。

だから。
野菜はたんなる食べ物にしか見えないんです。

 

ビヨンドザリーフ
たとえば。
Beyond the reefというニットクラッチバッグを販売している会社があります。
ひとつひとつが手編みで作られているこちらのバッグは、様々なメディアに取り上げられたこともありますが常に予約が入っていてなかなか手に入りません。
このバッグ。
じつは手芸教室に通っているシニアのおばあちゃんたちがおもに手編みをしています。
もちろん商品はそれなりの金額をいただくものですからプロとしての技術が求められますが、しっかりと厳しくチェックして一編みでもずれていたらやり直しをするなど徹底した品質管理を行っているそうです。
作り手であるおばあちゃんたちからすれば、趣味を生かしてお小遣いを稼げるし生きがいにもなる。
会社としてはアクティブシニアや高齢者の社会参加を促し、生きがいを提供することができる。
買い手からみれば、完全手編みの素晴らしいバッグが手に入る。
というわけです。

一編み一編み丁寧に編み込んで作られたバッグ。
顔までは分からないかもしれないけど、一生懸命つくってくれたことを想像するだけでうれしくなります。
そこには単なるニットのバッグという以上の価値があります。

 

感動が伝わる野菜とは

じつは野菜だって同じです。

その野菜を育てている農家をどれだけ知ることができているか。
どのようにして野菜が育てられているのか。
野菜にまつわる背景を知れば知るほど、その野菜を手に取ったときの感動が大きくなります。

つまり。
その農家に接する機会が多ければ多いほど。
その農家の情報発信が多ければ多いほど、濃ければ濃いほど。
野菜がどんな成長をしてきたのかを知る手掛かりになり、その結果として深い感動が待っています。

 

結婚披露宴
たとえば。
結婚式の披露宴に出席したことはあるでしょうか。
新婦側の友人として、新郎側の親戚として。
いろいろな立場で出席されることがあると思いますが、たいていは新郎もしくは新婦どちらかのことしか知りません。
相手の素性を知らないんです。
そこで。
新郎新婦の生い立ちビデオを流します。
生まれたときの写真から始まって、子どもの頃の写真、学生の頃の写真、就職して社会人になってからの写真。
文字を交えながら、その人がどのような人生を歩んできたのかが分かるように作ってあります。

このビデオによって。
全く知らなかった相手のことを少し知ることができます。
ほんのすこしでも過去をのぞくことで親近感がわきます。

だからこそ。
野菜の生い立ちを知ること。
野菜を育ててきた親(農家)を知ること。
これは親近感が湧くために欠かせないことなんです。

 

プライスレスの感動は簡単には見つからない

とはいえ。
野菜が育っている様子や農家が考えていることを積極的に発信している農家は、おそらくほとんどいません。
ただでさえ忙しくてヒーヒー言ってる農家に、積極的な情報発信は荷が重いからです。

私は以前、ホームページで野菜の生育状況についてけっこう頻繁に更新していた時期がありました。
50種類の野菜のほとんどで、タネを播いたときから収穫するときまでを写真付きで詳しく説明していました。

野菜の生育状況

でも。
この更新がかなりしんどかったんです。
途中から更新がおろそかになり、けっきょくやめてしまったという苦い思い出があります。

だから。
感動が伝わる野菜を探すのは簡単ではありません。
物語を持つ野菜を見つけるのは簡単ではありません。
でも。
探すだけの価値はあります。
プライスレスの感動は必死に探してようやく見つけたときに、その価値が高くなります。

ぜひとも。
必死になって。
がむしゃらに。
気長に。
じっくりと。
感動野菜を提供している農家を探してみてください。

 

 

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