農家にはプロフェッショナルとしての知識と経験がある
農薬は怖い。
農薬は危険なもの、人体にとって不必要なもの。
食の安全が脅かされている昨今、そのような気持になるのはよく分かります。
消費者として安全な食べ物をいただきたいという気持ちから、たくさんの知識を吸収して安全or危険の判断を自ら下して、なんとか安全性を確保したい。
その気持ちは痛いほど分かります。
でも。
その食べ物を育てている農家の判断には到底及ばない。
ということを覚えておいてほしいと思います。
農薬のどの成分が危ないからダメなんだ。
とか。
肥料は植物にとって自然に育つには必要ないんだから毒だ。
とか。
そういう知識を農家がみなさんより豊富に備えているかというと必ずしもそうではありません。
農家と消費者との差は、単純な知識量の差ではありません。
農業生産という大きな視点で見たときには
消費者として知ることができる農薬の知識
は、局所的な偏った意見であることを知っていただき、農家はもっと総合的にいろいろな視点から物事をみて判断している事実を知ってほしいと思います。
また。
野菜のことは野菜のプロに任せるという視点も持ってほしい、という話になります。
ぜひ最後までご覧ください。
医者は膨大な知識と経験から総合的に診断する
あなた自身もしくは身の周りの人で、発熱による体調不良があったとき。
医学の素人である私たちは、自分の過去の体験や書籍などで得た知識から
この症状ならインフルエンザに違いない
とか
これなら布団をかぶって寝ていれば治る
といった判断を下します。
でも。
もしかしたらインフルエンザじゃない可能性もありますよね。
症状の見当違いとか自分の知らない病気だったりして、それこそ場合によっては取り返しがつかないことになる可能性もあります。
それは。
私たち素人が、持ち合わせている限られた知識や経験の中で判断をしているからです。
ところが医者の場合は違います。
そもそも医師になるためには国家試験をパスするような膨大な知識が必要で、そこに長年多くの患者に携わったことで経験が蓄積されています。
その豊富な知識や経験をもとに、症状を見て患者を見て、どんな病気なのかを特定しているわけです。
つまり、医者は幅広く深い知識・経験をベースに総合的な診断をしています。
素人と医師。
この圧倒的な差が分かりますか?
私たちがいくら頑張って知識を蓄えたとしても、実際に現場で長く多く患者に携わって経験を積み、数多くの責任ある判断を下してきた医者には絶対に敵わないと思います。
農家も膨大な知識と経験から総合的に判断し、生産している
無農薬の野菜を買うという場合においても同じことが言えます。
消費者という立場で
「農薬は危険だ!安全だ!」
「肥料はどうだこうだ!」
という話を自分自身でしっかりと調べて考えて、農薬は危険だから無農薬野菜が欲しいという結論を出す。
これは気持ちとしてはわかります。
姿勢としても正しいと思います。
しかも。
その知識というのが、もしかしたら農家が持っている農薬の知識よりも正確で鋭いものかもしれないんです。
でも。
農家というのは農薬というものを多くの側面から見ています。
農薬が安全であるか危険であるか、という視点以外にも
農薬を使うことで作物にはどういう影響があるのか。
毒性や残留性はもちろん、作物の生育にどれくらいの効果をもたらすのか。
生産性や労働効率などはどの程度改善されるのか。
収穫されたものがどのような価値を生んで、消費者である皆さんにどういった価格で提供できるのか。
そもそも農薬は野菜にとって必要なものなのか。
単純に農薬が安全である危険であるという話以上に、色々な側面から主観的に客観的に農薬というものを見つめて、農家として生産者としてしっかりと経営をしていくために判断の舵取りをしています。
そこには食べ物を扱う、命を預かっているという責任が伴います。
つまり。
医者の例と同じで、農家は農薬使用の是非については安全性だけでなく、多くの知識と経験から総合的にみて使うか使わないかを判断しているわけです。
消費者が
農薬=危険
という結論を出すのとはまったく別の次元で結論を導き出している。
みなさんが考えている以上に多くのことを考慮しながら農薬を使っている、もしくは使っていない。
ということを知ってほしいと思います。
すこし日本の農業を信頼してみてほしい
もちろん全ての農家が膨大な知識と経験をもとに判断を下しながら生産をしているとは言いません。
あんまり考えずに適当な仕事をしてしまう生産者だっています。
たとえそうだったとしても。
少なくとも生産現場に携わっているという時点で、消費者である皆さんとは別の視点を持っていることは間違いないわけですし、農薬を使う使わないの判断をする時には安全性はもちろん生産効率や労働コストなどメリットとデメリットを考慮した上で結論を出しています。
自分自身が持っている知識だけで
農薬を使っている農業は悪だ!
世の中から農薬なんてなくなればいい!
といった偏見で見てしまうのは、日本では99%以上を占める農薬使用の農業に失礼だと思いますよ。
食の安全が脅かされてるという事実は間違いありません。
食の安全に対して不安な気持ちを持っている、これも痛いほどよくわかります。
でも。
食の安全にしっかりと真正面から向き合って生産に集中している農家はたくさんいます。
農薬は適正に使用すれば安全なものだという見解で、自信を持って農業をされている農家もたくさんいます。
いくら膨大な知識を持っていても素人は素人。
プロである農家の積み上げられた知識と経験には敵いません。
医者の診断に信頼できる重みがあるように、農家の判断にも信頼に足る根拠がありますから、ほんのすこしでいいので日本の農業を信じてみてほしいと思います。
ただし。
医師になるには国家資格があって一定の水準が保たれていますが、農家になるには実質的な資格がなく誰でもなれます。
そこは注意する必要がありそうです。