旬の野菜を食べなさい!の本当の理由

旬の野菜を食べる
旬の野菜を食べなさい。
とはよく聞く話ですが、それはなぜでしょうか。
その答えは、書籍やインターネットでいくらでも手に入ります。
生命力が強くて栄養価が高いから。
大量に出回るので価格が安くなるから。
旬に育てられたものは美味しいから。
旬のものを食べると免疫力や自然治癒力を高めてくれる。
などなど。

その答えはおそらくどれも正しいです。
ですが、なぜ旬に育てられた野菜が栄養価が高くなるのか、なぜ美味しくなるのか。
その理由を説明していません。

旬の時期に無理なく育てるから、元気に育つ。
元気に育てば結果として栄養価が高くなったり美味しくなったりする。

そうですね、ある意味では正解です。
でも農家の視点で見れば半分しか正解していません。
ではここで、さらに考えを深めてみます。
なぜキュウリを夏に育てることが、旬に育てることなのか。
キュウリにとってなぜ夏という季節が快適なのか。
キュウリを冬に育てることが難しいのはなぜなのか。
という疑問が湧いてきます。
この答えは、植物としての本能に関わる部分です。
野菜が持っている植物としての命に関わる深いところで、その野菜がどのような季節で快適に生きていけるのかが植えつけられているんです。

 

このことを分かりやすく言えば、祖先の記憶が強く残っているから。
ということになります。
つまり原産地で生きていた頃の記憶がDNAとして残されているから、ということです。
キュウリが冬ではなく夏に育てやすいのは、原産地が夏のような気候だからというのがその答えです。

ここでようやく「旬の野菜を食べなさい」の答えに辿り着きました。

野菜にとっての原産地の気候にあわせて、快適である旬に育てることが、元気に健康に育つことになり、結果として栄養価が高くなり美味しくなる。

というのが、「旬の野菜を食べなさい。」の本当の理由です。

 

原産地とは何か

ここで、もしかしたらみなさんの中には「原産地って?」と疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。
ふだんスーパーなどで目にする野菜のほとんどは、もともと日本で育っていた植物ではありません。
世界各地のさまざまな気候条件のもとで自生していた野生の植物の中から、
「これが食えるんじゃね?」
と思った人間が、食べやすいように美味しくなるように改良を加えてきたのが現在の野菜です。
詳しくはarrow070_01野菜の無農薬栽培が難しいのはなぜか
だからほとんどの野菜は、日本生まれではなくて海外のそれぞれの地域を故郷にもっています。

 

たとえば。
キュウリの原産地はどのような気候なんでしょうか。
もちろん私はそこに行ったことがありませんし、そこに生えている野生のキュウリを見たこともありません。
データをもとに推測することしかできませんが、それでもキュウリの記憶といえるものは探すことができます。

熱帯雨林
キュウリの原産地はヒマラヤ山麓の南側、シッキムという地域です。
現在のブータンやネパールのあたり。
熱帯気候や亜熱帯気候に属する地域で、非常に雨が豊富なところです。
つまり、一年間を通して暑くて、雨が多い地域。
寒くないから生きるのは簡単だけど、植物も虫も多種多様で生存競争が激しい混沌としている地域。
キュウリの祖先はそのような気候のところで生きていました。

そのような気候で他の植物との生存競争に負けることなく生き延びてきたキュウリ。
ということは、その気候であれば植物としては強い存在だということです。

そんなキュウリが日本に持ち込まれて、日本人に広く受け入れられるようになりました。
もともと熱帯気候を故郷にもつキュウリが日本で育てられるようになったんですが、日本の一年の気候の中で熱帯気候に近いのは夏だけです。
おそらく6月~9月くらい。
そのほかの季節は、春や秋であってもキュウリにとっては快適とまでいかなくてちょっと朝晩が寒いくらい。
というかそんなに寒い気温を経験していません。
体に染みついている祖先のDNAに、寒い気温に耐えるという記憶がないんです。
このことはキュウリにとって、日本で快適に過ごせるのは夏だけということを意味します。

だからこそ日本で育てられたキュウリは、キュウリにとって快適な気候である夏に育てられることで元気に健康に育ち、結果として栄養価が高くて美味しいものになるんです。

 

野菜を知ることは楽しい

原産地マップ
(画像参照:出所不明ですがたそがれ探偵団より引用)
ほかの野菜についても同じような歴史があります。
それぞれの野菜に歴史があり、育ってきた故郷があり、そこで培ってきた生きるための知恵や経験があります。
野菜の原産地を知り、歴史を知ることは、野菜を育てていくうえで非常に重要なことです。
食べる側にとっても、その野菜を深く知ることはなぜ旬の野菜を食べることがいいのかという問いに対して明確な答えを持つことになります。
旬の野菜を食べることが楽しくなります。

スイカがあんなに瑞々しいのはなぜでしょうか。
トマトがあんなに甘くなるのはなぜでしょうか。
すべては故郷にいたころのDNAが教えてくれます。
野菜の歴史を知ることで見えてきます。
興味があれば調べてみてください。

当サイトでもひとつひとつの野菜について詳しく解説していきたいと思っています。

 

それにしても。
日本でこんなにたくさんの種類の野菜を育てられるのは四季があるから。
春夏秋冬それぞれの気候は、温帯気候でありながら夏は熱帯に似ていますし冬は寒帯気候と似ています。
温帯ではない他の気候と重なる期間を含んでいます。
熱帯を原産地にもつ野菜もあれば、寒帯を原産地にもつ野菜もあります。
いろんな原産地の野菜を、短期間とはいえ再現できる日本の四季はすごいと思います。
温帯という恵まれた地域に住んでいることに感謝ですね。

 

 

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