日本の農薬使用量が多いのは統計のトリック
日本の農薬使用量がやたらと多いことについて、3つの理由があります。
ひとつは気候が高温多湿だから。
これは前回の記事で書きましたのでご参照ください。
単位面積あたりの農薬使用量が世界でトップクラスの日本
もうひとつは農地集約型だからという理由です。
日本という国は。
小さな島国だからこそ、農業ができる国土が小さいからこそ、少ない面積でいかにしてたくさんの収穫量をあげていくのかを考えていかなければならない。
多くの人口をかかえているからこそ、日本という小さな島国では農地集約型といわれるような農業が多く行われているんです。
そのこと自体が悪いわけではありません。
統計をとって国際的に比較してみると、農薬の使用が多いように感じられる。
それだけのことです。
今回はこのことについて詳しく書いていきます。
興味がありましたら是非ご覧ください。
農地集約型だから農薬使用量が多く見えてしまう
グラフを見てもらうとわかるのですが、単位面積あたりの農薬使用量が多いのは日本のほかに韓国やイタリア、オランダなどです。
これらの国々では、トマトやキュウリ、メロンなどビニールハウスで栽培するような、小さな農地をうまく利用して収穫量を高くしている栽培が目立ちます。
たとえば。
日本の人口密度はすごいですよね。
大都市の人の多さといったらとんでもないことになっています。
狭いところにぎゅうぎゅう詰めで住んでいるのが日本です。
そのようにぎゅうぎゅう詰めで育てられているのがトマトやキュウリ、メロンなどの野菜だと思ってください。
大都市にたくさんの人が住むためには、環境をしっかりと整える必要があります。
道路や鉄道などのインフラを整備して、上下水道を整備して、自動車の排ガス規制をかけて、都市計画によって居住地域や工業地域を分離して・・・。
それなりのお金をかけて、ルールを決めて、その上に都市生活が成り立っています。
(画像参照:トマト養液栽培における最新の動向と展望)
トマトやキュウリ、メロンなどを大都市のように密度を高くして育てようと思えば、環境を整備して、それなりの農薬を使っていく必要があります。
大都市の維持に多くのお金が必要なのと同様に、農地集約型農業には多くの農薬が必要なんです。
日本では。
広い国土をもっていないため、小さい面積を有効に活用するための栽培技術が発達しています。
こういった農地集約型の農業をすると、同じ場所で長く栽培し、長く収穫していく栽培になるので、農薬を散布する回数や量もそれに合わせて増えていくことになります。
これを単位面積あたりという指標でみてしまうと、農薬使用量というのは高くなってしまうんです。
作物ごとに農薬の使用量は違っている
このことは別に、どんな作物を育てるのかによっても農薬の使用量は異なってきます。
たとえば。
(画像参照:さっぽろ観光ナビ)
あまり農薬を使わなくても栽培ができる小麦、大豆、ジャガイモを大面積でやっているような国は、単位面積でみれば使用量は少なくなります。
大きな国土を持っているアメリカやフランスなどは、こうした国土の広さを生かした農業を得意としています。
逆に。
小さな面積で長く多く収穫していくようなトマトやキュウリなどの作物が多く育てられている国では、単位面積でみれば使用量は多く見積もられてしまいます。
小さな国土しか持たない国、日本や韓国、オランダやイタリアなどが、狭い国土でなんとか生産力を高めようとして農地集約型の農業をしているのが典型です。
狭い面積を利用してひとつの作物を長く栽培をしている。
小さい面積で多く収穫できるような作物をたくさん育てている。
というのが日本の特徴です。
ここで統計上の大きな問題があります。
今回利用している統計は、単位面積あたりの農薬使用量です。
これは全農薬使用量を全作物の栽培面積で割った単純な数字なんです。
だから上記のように農地集約型だと使用量が高くなりますし、土地利用型で大面積を利用すれば使用量は低くみえます。
作物によって違うのに、そこが考慮されていないたんなる平均値でしかありません。
たとえば。
日本人の平均年収はだいたい400万円くらいだそうです。
これを職業別にみてみると
国会議員 2134万円
医師 1154万円
弁護士 1036万円
国家公務員 662万円
システムエンジニア 541万円
保険外交員 431万円
自動車整備工 405万円
幼稚園教諭 346万円
タクシー運転手 301万円
美容師 263万円
ビル清掃員 234万円
というふうに職業別でみると年収に大きな開きがあることがわかります。
こういうバラバラな数字をまとめて、平均年収は約400万円ですと言っているんです。
ここで、年収が高い国会議員が多ければ平均年収は上がるし、年収が低いビル清掃員が多ければ平均年収は下がる、それは分かりますよね。
たとえば。
小面積・農薬多のトマトが多ければ単位面積あたりの農薬使用量は多くなりますし、大面積・農薬少の小麦が多ければ単位面積あたりの農薬使用量は少なくなる。
その国が栽培している品目や量によって大きく左右されるということです。
こういった栽培品目や栽培量は、その国の食習慣や輸出・輸入の事情によって大きく違ってきます。
平均をとることには、あまり意味がないことがおわかりいただけるでしょうか。
統計に惑わされないで
国土の違いや、国ごとの食習慣の違い。
それによって栽培する作物の種類が変わり、全体としてみれば単位面積あたりの農薬使用量に違いが出ます。
置かれている環境を無視した統計に惑わされて
日本は農薬使用量が多いから危険だ!
と言ってしまうのはどうかと思います。
次回は。
農薬事情3部作の最後、
について書いていきます。