農家直送によって得られる安心に隠された秘密
農家直送することは、必ずしも商品の価格が安くなることではない。
ということを以前に書きました。
農家直送の野菜は安く買えるのか?
簡単にまとめると
農家は商品を生産するだけでなく、小売店がやっている営業、集客、販売も担当する。
各家庭向けに小分けをした梱包をするので、その分の手間賃がかかる。
農協や卸売業者の中間マージンはカットできるけど小分け梱包の手間が余計にかかる。
農家から直接買ったからといって、スーパーで並んでいる野菜よりも格段に安くなることはない。
といった内容です。
残念なことに、金銭的な面からみればけっして安く買えるというわけではありません。
安さを求めて産地直送や農家直送を期待しているのであれば、それは期待外れになる可能性が高いです。
でも価格ではなく、別のところに価値を見出すのであれば。
農家直送はたいへんうれしい、たいへん価値のあるものになります。
顔の見える関係とは
結論からいうと農家直送は感情に訴える効果が高いです。
感情移入がしやすいといったほうが分かりやすいでしょうか。
顔の見える関係、とか言って顔写真を貼って農産物を売っていることがありますよね。
あれは生産者が誰なのかを知ってもらうことで安心して買ってもらおうという取り組みのひとつです。
顔だしするくらいだから不正はしていないだろう。
親近感が湧いてなんとなく安心できる。
そういう狙いで顔写真が貼られています。
でも。
みなさんがどのように感じているのかわかりませんが、私はそこに安心を見出せません。
顔写真でも生産者の名前でも、公開されているからといって安心はできません。
だって、顔や名前だけでは
どんな人柄で
どんな考え方をもって
どんな栽培をしているのか
なにひとつ分かりませんから。
安心できない理由は簡単です。
直接買っていないから。
顔写真があっても名前があっても、スーパーや産直市場で買うのであれば見えるのはその小売店のことだけです。
小売店そのものを信頼できなければ、そこで売っている商品を信頼して安心することはできません。
安心というのは、直接やり取りをした相手からしか得ることはできないんです。
この点でいえば、農家直送には非常に意義があります。
直接やりとりをするのが生産者そのものだからです。
たとえ顔写真がなくても、生産者の名前がなくても、生産している農家から直接買っているという安心感はたいへん大きいものです。
もちろん名前や顔が見えればもっと安心できます。
生産者の心意気などが見えたらさらに安心できます。
間を通さない、買う人と作る人がつながるというのは安心を得るための一番の近道です。
農家直送が安心できる本当の理由
ここで疑問が湧いてきます。
なぜ農家直送が安心できるのか。
直接手渡しをしているわけでもなくインターネットで買っているだけなのに、肌のぬくもりを感じられるわけでもないのに、なぜそれが安心につながるのか。
もちろん、農家さんと直接会って話をしてみて、納得したうえで農産物を買えば最上級の安心を得ることはできます。
でもほとんどの場合、直接会ってから買うというのは難しいです。
だからしょうがなくインターネットを使うんです。
その農家さんの人柄が分かるようなところから買ってみたり、生産履歴がしっかりと書かれているところを選んだり、栽培のこだわりが伝わってくる農家さんから購入したり。
直接的なぬくもりは得られないまでも、なんとか安心できる要素を探します。
安心できるところから買おうとします。
ここで。
よく考えてみてください。
インターネットという媒体を通して野菜を買うと何が起こるのか。
スーパーという媒体を通して野菜を通して買うのと何が違うのか。
その違いは、声が届くかどうか。
声を届ける権利を持てるかどうか。
ここに安心を得られる秘密があります。
農家から直接買うということは、食べてみた感想や価格に見合ったものだったのかといった評価を、農家に直接伝えられるということです。
ホームページ等から注文して購入しているのであれば、メールや電話で感想を伝えることができますよね。
おいしかった。
いまいちだった。
思っていたよりもお得感があった。
味の濃さにびっくりした。
虫食いがひどくて残念。
たくさん入っていてうれしい。
いいことも悪いことも、すべてを農家に直接伝えることができます。
直接意見を言える環境にある。
ということが非常に重要です。
農家の立場から見れば、自分の育てた野菜に対しての評価が直接耳に入ってくるんです。
悪いものは提供できません。
ご批判も直接受けますから。
だからがんばって育てます。
がんばって美味しいものを提供しようと努力します。
美味しいと言ってもらえるように、買ってよかったと言ってもらえるように努力を重ねます。
買う側の立場でみれば、商品に対する感想を届けられる。
賛辞の言葉だけでははなく、批判の言葉、文句だっていつでも言うことができる。
そういう権利を持っている、という安心を得ているんです。
買う人と作る人。
両者の間に一切の壁がないから、透明であるから安心できるんです。
言いたいことが言える状態。
これが安心を生み出します。
農家直送は顔が見えるから安心だ、と言葉に表しても実際は本当に顔が見えているわけではありませんし、話ができるわけでもありません。
直送というだけでは安心できているようで安心しきれません。
ところがその裏には、
直接声を届けられるという権利を持っている。
生産者に想いを伝えるための権利を手にしている。
安心の種になるものが隠れているからこそ、農家直送によって安心できるんです。
安心の裏に隠された権利。
行使するかどうかは自由ですが、権利を握っていることは覚えておいてください。
インターネットを使った買い物がしやすくなると思います。