農家直送の野菜は安く買えるのか?

以前はスーパーや地域の産直市場で購入するしかなかった野菜。
最近ではインターネットの発達によって、全国からいろんなものを取り寄せることが可能になりました。
有機農家から野菜を詰め合わせたセットを買う。
人参や玉ねぎ、ジャガイモなど長期保存ができる野菜を農家からまとめて買っておく。
このように生産者である農家から直接購入するというのは今では当たり前の行為になっています。
そして、こういった農家から直接買うときにふと思うのは
間に業者を通さないで買っているんだから商品価格は安くなるのでは?
という疑問です。
たしかにそういった側面もあります。
安くなる、というのはある意味で事実です。
が、その裏にはいろいろな事情が隠されています。
今回はそんな裏話になります。

 

商品にはいろんな利益が乗っている

スーパーなどで買うことができる一般的な野菜の流通をまず考えてみます。
野菜の流通経路
(画像参照:東京中央卸売市場)
赤矢印生産者(農家) → 出荷団体(農協など) → 卸売市場 → 小売店(スーパーなど) → 消費者
青矢印生産者(農家) → 出荷団体(農協など) → 小売店(スーパーなど) → 消費者

このルートがすべてではありませんが、だいたいこのような流れになっています。
生産者が収穫した野菜を出荷できる状態に調整して箱詰めして、それを農協に運ぶ。
農協は生産者から集めた野菜を卸売業者に渡して、そこで競りにかけられるなどして価格が決まり行き先が決まる。
卸売業者から運ばれた野菜は、各小売店で店頭に並べられる。
といった感じです。
生産者から消費者に野菜が届くまでに、いくつかの業者を経ていることがわかります。
ここで考えるべきことは。
間に入っている業者が、仲介手数料つまり中間マージンをとっている。
ということ。

大蔵大根
たとえばスーパーで100円の大根が売られているとすると、小売店の利益、流通業者の利益、卸売業者の利益、農協の利益それぞれ乗せられているので、農家の手元に入ってくるのはじつは20円ほどなんです。

もしこの大根を農家から直接買うことができたら・・・。
農場へ直接買いに行けたら、この中抜きされている業者の取り分がごっそり消えてなくなるんだから、20円で買えるのではないか。
そう思いませんか?

 

誰が利益を取るのか、という違い

たしかに、中間業者がいなくなるんだからこの場合の大根は100円じゃないことは確かです。
でも。
農家から直接買うということは、農家自身がスーパーの仕事もしているということです。
お客様を呼び込んで接客して、商品を販売する。
そういう仕事もするということです。
ということは、少なくとも小売店が取っていた利益分を農家が取ってもいいですよね。
20円で販売とまではいかなくも、40円とか50円くらいにはなるかもしれません。

農家から直接買う。
というのは上記のように農場に直接足を運んで購入する場合だけではありません。
たとえばインターネット上にあるホームページで注文をして、商品をヤマト運輸や佐川急便のような宅配業者に届けてもらう。
農家直送という言葉は、どちらかというとこのパターンのほうが多いですよね。
この場合についていえば・・・。
農家は商品を生産するだけでなく、小売店がやっている営業、集客、販売も担当します。
大きなロットで農協に卸すのとは違って各家庭向けに小分けをした梱包をするので、その分の手間賃がかかります。
お届けは宅配業者が行うのでその分の利益が商品代金に上乗せされます。
結局のところ、農協や卸売業者の中間マージンはカットできるけど小分け梱包の手間が余計にかかる。
営業、集客、販売や流通は商売には欠かせない要素なので、商品価格を下げる要素にならない。
ということなります。
農家から直接買ったからといって、スーパーで並んでいる野菜よりも格段に安くなることはない、ということなんです。
残念ながら。
ただし、大根100円のうち農家が70円ほどを手にするという特徴があります。
あなたが支払った代金の半分以上が、生産者である農家に手渡されるということです。
「買い物は投票である」
という言葉通りに、農家を直接応援することができるわけですね。

 

というわけで。
農家直送だからといって、必ずしも野菜が安く買えるわけではありません。
もし同じものがスーパーに並んだとしたら、もうちょっと高いかもしれないなぁという程度です。
でも、あなたが支払った代金は農家を直接応援することができて、農家を支えることができます。
農家にとっての大きな力となり喜びとなります。
この文章を書いている私は農家ですが、御支払いただいた代金によって支えられているなぁという実感は非常に感じますね。

農協や卸売業者が悪いわけではありません。
農家直送もたまには利用してみてください。
という話でした。

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