鮮度の秘密 野菜を良く知ることは長期保存につながる

前回の記事の内容は。
収穫したあとの野菜に、なんらかの変化があって、その結果として新鮮さが失われる。
新鮮さが失われる原因があるということ。
そのひとつが生長点である、ということについて書きました。
    鮮度の秘密 野菜を長く保存するための原理原則

生長点と鮮度との関係について簡単にまとめると
葉菜類は生長点を持っているためにエネルギー消費が激しい。
根菜類は生長点を持っているが蓄えたエネルギーが大きいため消費に耐えられる。
果菜類は生長点を持っていないが完熟に向かうためにエネルギーを消費する。
という傾向がみてとれます。

今回は、鮮度に関わるもうひとつの要素
温度
について書いていきます。

 

温度は基礎代謝と生長を抑える

生長点というのは、鮮度を低下させる原因となるものです。
これに生命を維持するための基礎代謝が加わって、時間がたてばたつほどどんどん新鮮さが失われていくんですが、この鮮度低下を防ぐためにできることはひとつ。

体力を消耗させないこと。
生長させないこと。
つまりは冷蔵する、これだけです。

生長点、というくらいですからとにかく生長をする部分なんです。
根を切られて栄養補給ができない状態で、生長という動きをいかにさせないか、基礎代謝をいかに抑えるか、ということを考えたらやっぱり冷蔵するのが最も有効だと思います。
あえて説明する必要もないですが、このことは動物に例えてみると分かりやすいです。
ヘビ、カエル、クマ。
これらの動物が寒い冬にやること。
体温を低下させて食料が少ない冬季をやりすごそうとする行動。
冬眠です。
クマの冬眠
ヘビ、カエル、クマなどの動物は、体温を下げて基礎代謝を抑えることでエネルギー消費を少なくして冬を乗り切ります。
じっと動かないようにして、摂食・排糞・排尿は冬眠中には一切行わないそうです。

これを野菜にも適用させてみる。
冷蔵庫で保存。
とにかく基礎代謝を抑えて、動かないようにすることが重要です。
このときの注意点が3つあります。

 

畑での様子を想像する

ひとつは、畑で育っていたときの状態で保存するということです。
野菜は根を切られても生きています。
収穫されたあと、みなさんのもとに届いたときにも野菜は生きていますから、生長点があれば当然のように生長しようとします。
畑にいたときと同じように動こうとします。
ここでもし野菜を寝かせて保存していたらどうなるかわかりますか?
もともと天に向かって育っている野菜は、冷蔵庫のなかに閉じ込められても天に向かって育とうとします。
暗くても天がどこか分かっています。
寝かされた状態から起き上がろうとする動きを見せるんです。
本当に?と思われた方はやってみるといいですよ。
冷蔵していると動きが鈍くなるので常温で葉野菜を寝かせておいてみてください。
たった数時間で起き上がった姿を目にすることができます。

この動きをさせることは体力を消耗させることです。
鮮度を低下させることです。
できるかぎり動かさないことが重要。
ということで、冷蔵庫で野菜を保存するときには畑で育っている姿で保存する。
このことに気をつけてください。
簡単にいえば根っこがあったところを下にする、ということです。
収穫したときの切り口を下にする、ということです。
これだけで鮮度低下はけっこう防ぐことができます。


野菜と原産地と温度との関係

2つめの注意点は、野菜によって冷蔵する温度が違うということです。
野菜にはそれぞれ原産地があって、育てるときにはそこの気候に近づけることが野菜にとって快適に過ごすことになる。
という話を以前に書きました。
    arrow070_01旬の野菜を食べなさい!の本当の理由
このときは育てるときの話でしたが、収穫したあとの野菜にも原産地の気候は関係があります。
おおざっぱにいえば、
夏野菜は寒さに弱い。
寒さに耐えられる野菜は、寒さに強い。
ということです。
真夏の暑さでも平気な顔をしてぐんぐんと生長を続けるナスやモロヘイヤは熱帯気候を好む植物です。
とにかく暑さに強いけれど、寒さにはめっぽう弱い。
そんな植物です。
寒さに弱いので、ふつうに冷蔵庫に入れられると寒さに負けてしまいます。
冷蔵庫
実際、ナスは5~7度くらいと言われている冷蔵庫の野菜室に入れておいても低温障害になって茶色く傷んでくることがあります。

そういう夏野菜のことを考えて野菜室は、冷蔵室に比べて温度を高めに設定してあるはずですが、それでも夏野菜にとっては寒すぎることが多いようです。
新聞紙にくるむなど防寒対策が必要かもしれません。

夏野菜以外、といってもいいんですがキャベツやブロッコリー、小松菜や水菜やネギなど秋から冬、そして春にかけて育つ野菜は真冬の寒さにも耐えることができるものが多いので、収穫したあとの保存についても温度設定は低くて大丈夫です。
というよりも低くないと生長してしまいます。
畑で育っているときも真冬の0度を切るような厳しい寒さに耐えているので、夏野菜が好むような保存の温度10度前後では暖かすぎてぐんぐん生長してしまう可能性があります。だから、野菜室では温度が高すぎるんです。
5~7度という設定温度では高すぎるんです。
といっても、そんなにぐいぐい動くような温度帯ではありませんので気にせずに野菜室で保存してもらえればいいと思いますが、欲をいえば野菜室ではなく冷蔵室に保存しておきたいというのが正直な気持ちです。
ブロッコリーなんかはチルド室に入れたいところ。
ふだんは肉や魚を入れておくことが多いチルド室ですが、設定温度が限りなく0度に近いため生長が早く傷みやすいブロッコリーを保存しておくには最適な温度なんです。
実際、海外からブロッコリーを輸送してくるときには0度に近い温度設定にして鮮度低下を防いでいるという話を聞いたことがあります。


もしも。
旬の野菜を旬の時期に食べている、季節を外したような野菜はあまり食べないよというご家庭であれば、野菜室の温度設定を季節によって変えてみるといいかもしれません。
低・中・高という設定があるのでしたら、
夏野菜がある時期には高の設定に。
真冬の寒さに強い野菜がある時期には低の設定に。
というふうに。
野菜にとってはこのほうが快適なはずです。
もしこれができない冷蔵庫であれば、夏野菜は野菜室に保存して、それ以外の寒さに強い野菜は冷蔵室になるべく保存する、などの工夫ができます。
ブロッコリーはチルド室に、生長が早いアスパラガスは立てて保存したいけど立てるだけのスペースがないからドアポケットのドリンクスペースに立てておくとか。
野菜は野菜室に、という概念を取り払うことが野菜にとっては快適になることが多いですよ。
試してみてはいかがでしょうか。


乾燥させないこと

最後に3つめの注意点。
野菜全般、芋類以外に言えることですが乾燥をさせないこと。
これはけっこう重要です。
水分が抜けてしおれてしまったら、生長点とか温度とか関係なく野菜が悲しい状態になってしまいます。
保存するときはビニール袋などに入れる。
これは徹底してほしい最重要事項です。

 

 

畑で育っていたときの状態で保存する。
野菜によって保存する温度を変える。
乾燥を防ぐ。
この3点に気をつけることで野菜は長く保存することができるようになります。
ひとつひとつの野菜について、この野菜はこんな風に畑で育っていてこんな温度帯の原産地で保存するならこのくらいの温度帯がいいよ、といったことをここで書いていくことはできません。
それぞれの野菜については今後、ホームページ内でひとつひとつ記事にしていこうと思っていますのでそちらを参考にしていただければ幸いです。

 

 

関連記事