暖冬により野菜が巨大化!立場によって悲鳴と歓喜に分かれる

2015年から2016年にかけての冬。
いまのところ暖冬傾向が続いています。
厳しい寒さが続くよりは暖かい日が多いほうがうれしいのが人としての想いですが、野菜農家としてはちょっと違います。
気候に左右される野菜の生産。
農家にとって暖冬は、必ずしもうれしいわけではないんです。

 

豊田市の伊良湖化

気象庁の発表を以下に引用します。

2015年(平成27年)12月の天候の特徴は以下のとおりです。

全国的に気温がかなり高く、日本海側の降雪量はかなり少なかった
日本付近は冬型の気圧配置が長続きせず、寒気の南下が弱かった。このため、全国的に気温がかなり高く、東日本では平年差+1.9℃で12月として1位の高温(統計開始1946年)となった。また、日本海側の降雪量はかなり少なかった。


平均気温平年差2015
たしかに体感的にもかなり暖かい12月だったなぁと実感できるものがありました。
野菜たちはぐいぐい生長しましたし、そこに暮らす人間にとってもかなり過ごしやすく畑にいても例年よりも薄着のことが多かったです。
気象庁に言われなくたって分かるくらい、ほんとに暖かい日が続いています。
とはいえ、私は数字で確認しないと気が済まない性格です。
実際に、松本自然農園がある愛知県豊田市のデータを参照してみましょう。

過去の12月の平均気温(1981年~2010年) 5.7℃
2015年12月の平均気温             8.3℃

その差なんと2.6℃!
これがどれくらいすごいかというと
南知多(愛知県)
過去の12月の平均気温(1981年~2010年) 7.0℃
伊良湖(愛知県)
過去の12月の平均気温(1981年~2010年) 8.3℃

愛知県の中でも暖かい地域として知られる南知多よりも暖かく、愛知県の中でもっとも暖かい地域として知られる伊良湖と同じくらいの気温だったんです。

じつは11月もかなり暖かい日が多くて、平均気温を見ると豊田市は11月も伊良湖並みの暖かさでした。
ものすごい暖冬です。


暖冬によってもたらされる利益と損害

札幌大球
これによって畑では何が起こっているかというと

野菜が巨大化

していってるんです。
例年だと霜が降りるような季節、11月中旬を過ぎてくると野菜たちは寒さに耐えるために生長を止めてじっとしています。
野菜の大きさはそこで止まってしまうんです。
それが今年はまだ生長を続けるだけの暖かさがある。
寒さに耐えなくてもいいからどんどん大きくなっていくんです。


このことはニュースにもなりました。
暖冬傾向
暖冬傾向で、野菜の生育に影響が出ている。
消費者にとってはうれしい傾向も、生産者にとっては死活問題となっている。
というような話です。
野菜を購入する消費者としては、大きくて安ければお得です。
いいことばかりです。
それが野菜を供給する生産者からするとまったく嬉しくない状況に変わります。

野菜が育ちすぎてしまうため、前倒しで野菜が次々に収穫適期を迎えます。
そうしてどんどん出荷された野菜は市場でだぶつき、供給過剰となって価格が暴落してしまうんです。
しかも、前倒しで収穫しているということは2月とか3月に収穫するはずだった野菜がなくなるということでもあり、豊作なのに貧乏、という状態になってしまいます。

大きくて見事な野菜が収穫できているのに、素直に喜べない生産者。
なんだか複雑な心境ですね。

 

野菜セットは契約栽培なので影響が少ない

有機農業においてよく見られる、野菜を10種類程度詰め合わせて宅配している有機栽培農家。
いますよね。
その農家から直接、家庭へ配送してもらっている方も多いのではないでしょうか。
生産者から直接買っているという場合、たいてい価格は動きません。
野菜セット3000円であれば、毎回3000円分の野菜が送られてきます。
収穫量に応じて詰め合わせる野菜の量が多かったり少なかったりすることはありますが、家庭で食べられる量を安定してお届けすることが前提ですのでそれほど大きな量の違いはないと思います。
スーパーでみる価格の上下ほど、大きな動きは有機宅配農家にはないです。

今回の暖冬傾向についてもそのスタンスは変わりません。
いつもよりも大きくて見事な野菜をお届けすることはありますが、それで価格が上がったり下がったりすることはありません。
たくさん採れたからといって一気にたくさんお届けしてしまうと、家庭では消費しきれなくなるから、極端にボリュームアップした野菜セットになったりしません。
ふだんよりはお得になっているかもしれませんが。

安定した価格で、安定して野菜をお届けする。
有機宅配農家は、それが食べてくれる人たちの安心につながることを知っているからこそ、市場でみられるような極端な動きを嫌います。
定期宅配という直接契約だからこそ、需要と供給は安定しています。

農家からの定期宅配をご利用の皆様。
暖冬やら厳冬やら、一喜一憂する周りのことは気にせず、いつも変わらない穏やかな空気すら漂う定期宅配を安心して楽しんでいただければ幸いです。
松本自然農園だけでなく、ほかの有機農家さんも同じようにやっておられるはずですよ。

 

 

関連記事