栄養素信仰では食卓に笑顔は生まれない

まずは野菜の王様として知られるモロヘイヤの栄養成分について読んでください。

モロヘイヤ
老化の原因である活性酵素の働きを抑える効果のあるカロチンの含有量が野菜の中ではトップクラス。
ホウレンソウの4.6倍、ブロッコリーの19倍も含まれています。

ビタミンEの含有量は野菜の中ではナンバー1です。
ビタミンEには強い抗酸化作用があり、血液を綺麗にして血栓を防ぎます。

ビタミンB群としてビタミンB1、B2、B6も豊富に含まれ、たんぱく質の再合成を助けて疲労回復に役立ちます。

ヘモグロビンの材料となる鉄に加え、鉄の吸収を高めるビタミンCも豊富に含まれているため、貧血の予防に効果的です。

カルシウムは野菜のなかで100g中260mgと、パセリの290mgに次ぐ含有量です。
ホウレンソウの9倍、ブロッコリーの10倍も含んでいます。
カルシウムをとることで骨粗鬆症の予防、ストレス解消などに効果が期待できます。

カリウムの含有量も野菜のなかでは上位に入ります。
カリウムは体内の余分なナトリウムを排泄(はいせつ)し、高血圧予防に有効に働きます。

 

次にキュウリの栄養成分について書いていきます。
イボ美人
全体の90%以上が水分で、栄養素はビタミンC、カロチン、カリウムなどが含まれるが含有量は非常に低い。
・・・以上。

野菜の王様と言われるくらい栄養成分が豊富なモロヘイヤと、「世界一カロリーの低い果実」としてギネスブックに認定されてしまったキュウリ。
両極端な例ですが、モロヘイヤが必要な野菜でキュウリは必要ない野菜かというとそんなことはありません。
両方とも日常的に食べるに値するすばらしい野菜ですし、食べておいしい野菜です。
栄養成分が少ない野菜として有名なキュウリだって、体を冷やす作用があったりカリウムによって高血圧予防に有効に働いたりします。

食べてもまったく意味がない、という野菜はおそらくありません。
たとえ栄養素が少ないとしても、たいていは食べたらなんらかの作用があるものです。

そんな野菜ですが、一般的にはたくさん食べられており
体によいから食べなさい
と口癖のように言われます。

なぜここまで野菜が重宝されるのか。
食べなさい食べなさいと頭が痛くなるほど連呼されるのか。
その答えはさきほど書いたとおり
栄養素が少ないなりにも食べたら何らかの効果があるから
ということに尽きます。
食べることで健康を害するような野菜がないからこそ、毎日食べることを勧められるわけです。

 

栄養素信仰の恐怖

じゃあ、何と比べて体によいと言ってるんでしょうか。
野菜を食べなさいと言う背景には、食べてほしくない何かがあるから、それを食べるよりも野菜を食べてほしいという願いが含まれていますよね。
その食べてほしくないものとは
肉ですか?
魚ですか?
米や麦などの穀類ですか?
それとも菓子ですか?

国が推奨している、健康であるためにはこのくらいの栄養バランスで食事をしましょう、という数値をもとに食べる食材のバランスも考えられているんでしょうね。
肉を食べすぎないように
米や野菜はこのくらいの量を摂るように
という指標があるからこそ、野菜をもっと食べましょうという運動が進むんです。
野菜類を一日350g以上食べましょう
という目標がこれに当たります。
この目標に届いていないからこそ、もっと野菜を食べましょうと勧められる。
もしも目標を達成できたとして、そのときにも生活習慣病の改善にあまり効果が見られなかったら・・・。
目標が、
一日500g以上食べましょう!
に変わったりするのでしょうか。
それとも、健康に寄与するのは野菜ではない、日本人にはやっぱり魚だ!という運動が始まるんでしょうか。

どの栄養素がどれくらい体にとって必要なのかは個人差があります。
含まれている栄養成分の違いから摂るべき野菜の種類は違います。
高血圧気味の人にはカリウムを多く含んでいる野菜を。
鉄分が不足しがちな妊婦さんには鉄分を多く含んでいるホウレンソウやツルムラサキを。
便秘がちな人には食物繊維をたくさん含んでいるサツマイモやゴボウを。
というように健康状態によって摂るべき野菜の種類は違ってきます。
高血圧気味な人と、妊婦さんでは必要な栄養バランスは違いますし、糖尿病で苦しんでいる人といたって健康な人とでは食べるべき食材は異なります。
その人の置かれている状況によって、それぞれが考えるべき問題です。

 

食べる目的とは

あくまで個人的な意見ですが。
国が出している指標はごく一般的にみた平均的な数値であって、参考にすべきだとは思いますが従う必要はないと思います。
年齢によっても変わりますし。
肉をがっつり多く食べて健康に過ごす若者もいれば、食が細って野菜だけで充分だという年配者もいます。
それぞれが自分の体調や健康状態を把握して、今の自分にとってどんな食事をすることがベストなのかを考える。
そのときに、明るみに出ている栄養成分などを参考にするべきです。

もちろん栄養成分なんて知らなくても健康に生きていくことはできます。
毎日食べたものによって体調に変化があることくらいは、何十年も生きていればなんとなくでも分かってくるものです。
昨日ラーメン食べたせいでなんだか体が重いなぁ。
野菜ばっかりだと力が出ないなぁ。
サツマイモ食べたおかげで便秘が解消された。
食べたものによる体の変化に少しでも耳を傾けて気にしているだけで、自分にとってベストな食生活が見えてきます。

ひとつひとつの野菜の成分をみて、モロヘイヤは栄養素が豊富だから食べようとかキュウリはあまり栄養が摂れないから食べないとか、そういう選択はあまり賢いとは思えません。
もし完璧な栄養成分を求めるのであれば
玄米にゴマ塩をふりかけて食べる
そうすれば栄養的には完璧です
これを毎食365日続けましょう、という極端な話になってしまいます。
食事する親子
翌日の体調がよくなるから食べる
美味しいから食べる。
それだけでいいじゃないですか。
食べる目的はなんですか。
生きるためであり、幸せになるためです。
栄養素に振り回されて眉間にしわが寄るような食べ方ではなく、美味しくて笑顔があふれるような食卓にしたいものです。

 

 

関連記事