キレイ好きだから農薬使用量が多いって本当?

日本では単位面積あたりの農薬使用量がアメリカの7倍だといわれています。
えっ?
7倍も農薬を使っているの?

なぜ日本では諸外国よりも多くの農薬を使っているのか。
このことについては、三つの側面から考えることができます。
●高温多湿だから
●農地集約型だから
●きれい好きだから
この三つです。

これまでの記事で、3つのうちの2つまで説明してきました。

単位面積あたりの農薬使用量が世界でトップクラスの日本

日本の農薬使用量が多いのは統計のトリック

今回は。
日本人はきれい好きだから農薬の使用が多い。
ということについて書いていきます。

ふだんの購買行動が農薬使用量を増やしている

農薬の使用量が多い。
その要因のひとつは、日本人の気質とも言うべきところに隠されています。
真面目で几帳面、繊細、礼儀正しい、キレイ好き
日本人は客観的にみて、このような気質を持っていると言えます。

高機能トイレ
(画像参照:TOTOホームページ トイレ
ホテルやレストランなどのサービス業での対応
電車などの交通機関は定刻が当たり前
温水洗浄機能や暖房便座機能が当然のように普及している高機能便器

日本しか知らなければ当たり前だと思うようなことでも、国際的にみれば
オー、マジメね~
と感じることは少なくありません。

その日本人の気質は、野菜業界においてもいかんなく発揮されています。
たとえばスーパーで野菜を買うときのことを想像してみてください。
傷やちょっとでもついていたら買わない。
虫食いで穴が空いているなんてとんでもない。
泥つきだって許しません。

つやつやしていて、葉や実に虫食いの跡がなくて、形がシュッと整っている。
色が濃くて美味しそうなものを選びます。

スーパーで買い物をする人たちが、みんなそういう行動をとったらどうなるかというと。
見た目がきれいな野菜が売れるのか、とスーパー側は受け止めます。
それを流通や卸業者に伝えます。
流通や卸業者にとってはスーパーなどの小売店がお客様なので、要望に応えるために見た目にきれいな野菜をそろえようとします。
ということは、生産者に見た目を重視した野菜をつくってくれという要望が伝わるということです。
生産者は、それが求められている商品であるなら必死でがんばります。
とにかく虫食いがないように、傷みのないように、ちょっと過剰かもしれないと思いつつ農薬を多めにかけて虫に野菜が食べられないようにします。

つまり。
スーパーでなにげなくとっている購買行動は、生産現場にまで伝わって農薬の使用に関わってくるんです。
見た目にきれいな野菜を求めるから、それに応えるために農薬を多く使う。
そういう構造ができています。
日本人の過剰なまでの清潔志向が、そうさせていると言えるかもしれません。

慣行農業と有機農業それぞれが目指すもの

でも。
だからと言ってキレイ好きな日本人はだめなんだ、とはなりません。
現代の日本人は、見た目だけではなく安全性も求めています。
だったら両方を満足できるように技術を向上させていこうじゃないか、というのが真面目な日本人のいいところだからです。

見た目がよくて安全性も高い野菜。
これを慣行農法も有機農法も、それぞれの立場から追求しているのが今の日本です。

慣行農法では。
流通している99%以上の野菜をつくっている慣行農法では、これまでずっと見た目の要望を満たし続けてきました。
ここからさらに、農薬の使用をできるだけ減らしていいものを作っていこう、という努力を続けています。

有機農法では。
無農薬という土台に立ちつつ、消費者が満足するような見た目にきれいなものを作っていこう。
農薬に頼らないで虫食いのない野菜を育てていこう。
そういう努力をしています。

慣行農法も有機農法も。
両者ともアプローチは違うけど、見た目がよくて安全性も高い野菜、という同じ目標に向かって進んでいるんです。

私は有機野菜が欲しいんだから、農薬の使用量なんて関係ありません。
農薬を使った慣行農法なんて興味ありません。
ではないんです。

有機農業で培ったノウハウは慣行農業に生かされるし、慣行農業で培ったノウハウは有機農業で生かされる。
まったく別のアプローチからひとつの目標に向かっていくことで、日本の野菜はどんどん洗練された素晴らしい品質になっていきます。
慣行農業は悪だとか、有機農業は善だとか、そんなつまらない話ではありません。
どちらも日本の農業を発展させていくには欠かせない存在なんです。

今だけではなく将来を見据える

道しるべ
見た目にきれいで安全性が高い農産物。
これを満たすために、日本の農業は日々の努力を続けています。
現に統計を見れば、日本の農薬の使用量は年々減ってきています。

今はまだ、潔癖な気質が災いして見た目を気にした農薬使用量になっているかもしれません。
国際的にみればまだまだ青二才な日本農業なのかもしれません。
でも。
真面目で几帳面、繊細な日本人はすごいんです。
戦後の敗戦から立ちあがって世界トップクラスの経済大国になったように、世界一安全できれいな野菜を育てられる農業大国になるのも、そう遠くない未来なのかもしれません。

今だけを見るのではなく将来の姿も想像しながら、長い目で現状を評価してほしいと思います。
優秀な日本民族の血を信じてほしいと思います。

 

 

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